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目的と主旨

免疫グロブリン・スーパーファミリー細胞接着分子(IgCAM)に属するTSLC1/IGSF4 は、2001年に申請者らにより新規がん抑制遺伝子として同定され、その機能欠損が肺がん等多くの腫瘍の進展に関わることが報告されております。一方、成人T細胞白血病(ATL)では全例で異所性に高い発現を示し、臓器浸潤などATLに特徴的な病態に関与する可能性が見出されます。さらにTSLC1/IGSF4は精巣、神経、肥胖細胞、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞等でも発現し、精子形成、シナプス形成、腹膜感染や気管支喘息、がん免疫に各々重要な役割を果たすことが、その後の独立した研究により報告されています。このことは、IgCAMとしての多様性、特異性に基づくTSLC1/IGSF4蛋白質のホモ・ヘテロ結合が、時間的、空間的に適切な細胞間相互作用を生じることが、様々な生理的、病的現象に関わることを強く示しています。しかし、この領域の研究がごく最近、急速に発展したこともあり、これまで異分野の研究者間の交流は一度も行われておりませんでした。この度、藤原科学財団の支援の下に、第55回藤原セミナーとして、その第1回国際会議を開催することになりました。関連研究者が初めて一同に会し、細胞接着と共役したTSLC1/IGSF4の多彩な機能と病的意義の包括的理解を図り、情報交換を行うと共に、資源、手法を共有し今後の研究発展に繋げることを本セミナーの目的と致します。

口頭発表は国内外からの招待講演者によるものとし、ポスターによる一般発表を併催します。参加者は約60名程度とし、十分な討論を行なえるよう留意いたします。会場は新千歳空港からアクセスの用意な苫小牧市「グランドホテルニュー王子」です。

セミナー内容の概要は下記の通りです。

1. TSLC1/IGSF4の上皮における役割と、がん抑制遺伝子としての意義の解明 肺、食道、鼻咽頭、乳腺、子宮がん等におけるTSLC1/IGSF4の異常の実態と意義を報告し、また分子細胞生物学、動物モデルを用いた上皮における機能について考察します
2. シナプス接着における役割 シナプス接着分子としてのTSLC1/IGSF4の機能を他の接着分子との関係も含めて検討します。
3. NK細胞による免疫応答における役割 NK細胞とがん細胞との応答におけるTSLC1/IGSF4分子の役割を培養細胞や動物で検討します。
4. 肥満細胞における役割 肥満細胞の生存や腹腔線維芽細胞、気管支筋上皮細胞との接着による腹膜感染や気管支喘息におけるTSLC1/IGSF4分子の機能を明らかにします。
5. 精子形成における役割 精子細胞とセルトリ細胞との接着における役割を遺伝子欠損動物の解析を含めて考察します。
6. 関連科学 TSLC1/IGSF4の機能解析に必須の基盤的研究としてIgCAMの網羅的抗体作成技術が紹介され、また機能解析に基づく疾患遺伝子研究に関する最新の研究成果が発表されます。

これらのセミナーでの討論は、TSLC1/IGSF4を介する細胞接着、細胞間認識の観点から、今後、様々な生理的現象や病態の理解を発展させる上で極めて貴重であります。また、TSLC1/IGSF4研究者が連携し、共通の問題意識をもち、技術や資材を共有することを可能とし、連携してヒト疾病の予防・治療法の開発を目指す上でも大きく貢献すると期待されます。